遮熱塗装は“塗るだけ”では効果が落ちる?通気性の確保がカギ
遮熱塗料は、屋根表面で太陽光を反射し、建物内部の温度上昇を抑えるためのもの。ですが、ただ塗るだけでは本来の効果を十分に発揮できない場合があります。その理由のひとつが、「屋根材の通気性不足」です。屋根材にはスレートなどの“重なり”があり、そこに微細なすき間があることで内部の湿気や熱が自然に逃げるよう設計されています。ところが、遮熱塗料を施工する際にこの重なり部分まで塗料で密着させてしまうと、屋根内部の通気が失われてしまうのです。
その結果、以下のようなトラブルが起こるリスクがあります:
- 熱がこもり、遮熱効果が逆に弱まる
- 湿気が抜けず、木材の腐食や結露が発生
- 雨水が逃げ場を失い、毛細管現象による雨漏りを誘発
こうした問題を防ぐために使用されるのが、「タスペーサー」という小さな部材です。

屋根材の重なり部分に差し込むことでわずかなすき間を確保し、通気・排水を助けながら、遮熱塗装の効果を最大限に発揮させる役割を果たします。
つまり、遮熱塗装を成功させるためには、塗料選びだけでなく「施工の方法」や「屋根材との相性」にも注意が必要なのです。
「見えないところにこそ差が出る」――それが遮熱塗装の本質です。
塗装後のトラブルを防ぎ、しっかりと効果を得るためには、通気性の確保と適切な部材の使用が欠かせません。
タスペーサーとは?屋根の隙間を確保する縁の下の力持ち
タスペーサーとは、スレート屋根材の隙間を確保するためのスペーサー部材です。一般的に樹脂製で、屋根材同士の重なり部分に挿し込むことで、塗装後に屋根が密着しすぎないよう調整します。

タスペーサーの役割は主に3つ:
- 縁切り(屋根材の隙間確保) 塗料が屋根材の隙間に入り込むと、くっついてしまい雨水の排出が妨げられます。これを防ぎます。
- 雨水の排出促進 屋根内部に侵入した雨水が、適切に外へ流れるようにします。
- 通気性の確保 屋根内部の湿気を逃がし、結露や熱こもりを防ぎます。
このように、タスペーサーの設置は「塗装の仕上がりを保つ」だけでなく、遮熱塗料本来の性能を十分に発揮させるために不可欠な工程なのです。
遮熱塗料との相性がカギ!タスペーサーで熱だまりを防止
遮熱塗料は、日射反射率が高い塗膜を形成して屋根表面の温度上昇を抑えます。しかし、屋根内部に熱がこもっていては、せっかくの遮熱効果が無意味になります。
例えば、以下のようなケースではタスペーサー未使用により遮熱効果が落ちる可能性があります:
- スレート屋根材が密着 → 通気が悪化 → 蓄熱状態に
- 湿気が溜まり → 屋根材や断熱材の劣化を促進
- 屋根裏の空気が蒸し風呂状態 → エアコンの効率が低下
タスペーサーによって屋根材の間に空間を確保することで、通気・排熱がスムーズに行われ、遮熱塗装の効果をしっかりと発揮できる環境が整います。
どんな屋根にタスペーサーは必要なのか?
すべての屋根にタスペーサーが必要というわけではありません。以下は、タスペーサー設置が「必須または推奨」とされる代表的な屋根材です:
屋根材の種類タスペーサーの必要性理由スレート屋根(コロニアル・カラーベスト)必須塗料が隙間に入り込みやすく、縁切りが必要セメント瓦ケースによる重ね部分に余裕がある場合は不要なこともガルバリウム鋼板屋根基本不要一体成型で隙間ができにくいため
特にスレート系の屋根材では、遮熱塗料の施工とセットでタスペーサーを入れるのが常識ともいえるレベルです。

タスペーサーと「縁切り」の違いって何?
実は、タスペーサーの登場以前は「カッターやヘラ」で物理的に隙間を切る「縁切り」が主流でした。ですが、この方法には以下のような課題がありました:
- 作業が重労働かつムラが出やすい
- 手作業で屋根を傷つけるリスクあり
- 施工後のチェックがしにくい
一方、タスペーサーはあらかじめ設置しておくことで、塗装後に縁切り作業が不要。仕上がりも安定し、施工品質が高まるため、現在ではほとんどの業者が採用しています。
タスペーサーは何枚使う?設置のポイント
一般的に、1㎡あたりに約2〜3枚のタスペーサーを設置します。屋根の形状や勾配によっても異なりますが、以下のような点を基準にします:
- 屋根材の重なり幅と枚数
- 通気が必要な箇所(北面などは湿気がこもりやすい)
- 雨水が集中する軒先周辺
また、設置の際は「挿入方向」「挿入の深さ」に注意が必要。しっかり奥まで挿し込むことで、塗膜の厚みによる密着リスクを回避します。
遮熱塗装+タスペーサーで得られる4つのメリット
遮熱塗装とタスペーサーの組み合わせには、見えにくいけれど確かな“効果アップ”のメリットがあります。
特に、施工後の快適性・安心感・耐久性において、その違いは年々はっきりと現れます。
以下は、遮熱塗料にタスペーサーを併用することで得られる主なメリットです:
項目 | メリット内容 |
---|---|
遮熱性能 | 屋根の通気性が確保されることで熱がこもりにくくなり、塗料の反射効果を最大限に発揮します。 |
雨漏り防止 | 屋根材のすき間がきちんと保たれ、雨水が自然に排水されるルートを確保。毛細管現象による雨漏りを防ぎます。 |
屋根の耐久性 | 通気が良くなることで、内部の結露や湿気がたまりにくくなり、木材の腐食リスクを軽減。屋根材が長持ちします。 |
施工の信頼性 | タスペーサーを使うことで“縁切り”作業(乾燥後に塗膜をカット)が不要に。ムラなく安定した仕上がりになります。 |
これらの効果はすべて、「塗装直後の見た目」ではなく、数年先までしっかりと性能を保つかどうかに関わるポイントです。
初期費用にわずかな差が出たとしても、結果として再塗装のサイクルが延びたり、修繕コストを抑えられたりといった“長期的なコスパ”につながります。
遮熱塗装を検討する際は、「どの塗料を選ぶか」だけでなく、“どう施工するか”にもぜひ注目してみてください。
タスペーサーの設置を確認するには?
業者に塗装を依頼する際、「タスペーサーの使用有無」は必ず確認しましょう。信頼できる業者は見積もりや工程表にしっかり明記しています。
さらに、以下のような姿勢を見せる業者なら安心です:
- 施工前に屋根材の状態をしっかり点検する
- 使用するタスペーサーの種類と設置位置を説明してくれる
- 施工写真を残して「ちゃんと挿した証拠」を提示してくれる
まとめ|遮熱塗装におけるタスペーサーの役割は「陰の主役」
遮熱塗装の効果を最大化するには、塗料の性能だけでなく、施工時の細やかな配慮が不可欠です。
タスペーサーという小さな部材が担う「縁切り」という工程は、遮熱性能・雨漏り防止・通気性・屋根の長寿命化といった、あらゆる要素に深く関わっています。
ぜひ遮熱塗装を検討されている方は、タスペーサーの有無まで含めて、施工内容をチェックしてみてください。業者選びの大切な指標にもなります。