遮熱塗料は、建物の表面温度を低減し、室内の快適性を向上させるために使用されます。日本建設業連合会が公開している「遮熱・断熱塗料比較表」には、各社の遮熱塗料の性能や特性が詳細に記載されています。本記事では、同資料を参考に、主要な遮熱塗料を比較し、その特徴を解説します。
遮熱塗料は、建物の屋根や外壁に塗布することで、太陽からの熱を反射し、室内の温度上昇を抑える効果を持ちます。特に夏場の冷房負荷を軽減することで、省エネルギー効果が期待できます。さらに、ヒートアイランド現象の抑制にも寄与し、環境負荷の低減にもつながるため、近年注目されています。
比較対象の遮熱塗料
以下の製品を比較対象とします。
- NCK:アドクールAqua
- アクアウエスト:セラミック・カバーCC100
- アクアシステム:断熱くん
- オバナヤ・セメンテックス:OSクール工法
- アトミクス:アトム遮熱バリアルーフ
- スズカファイン:レベクールコート+クールトップSiスーパー
各製品の特徴と適用シチュエーション

1. NCK:アドクールAqua
- 組成・材質:水系塗料
- 熱反射率:61.5%
- JIS 近赤外線領域波長範囲:780~2500nm
- 耐候性:長寿命仕様
- 設計単価:公表なし
- 耐用年数:10年以上
- 適用シチュエーション:
- 環境負荷を低減したい施設や建物に適しており、持続可能な社会への貢献を意識したプロジェクトに最適。
- 近赤外線領域の波長を効率よく反射するため、都市部のヒートアイランド対策としての利用にも向いている。
- 住宅や商業施設において、長期間にわたる遮熱効果を求める場合におすすめ。
- エネルギーコストを削減したい企業や工場、特に広い面積を持つ倉庫や物流センターでの導入が効果的。
2. アクアウエスト:セラミック・カバーCC100

- 組成・材質:水系塗料
- 熱反射率:99.61%
- 熱伝導率:0.018W/m・K
- 耐候性:データなし
- 設計単価:非公表
- 耐用年数:10年
- 適用シチュエーション:
- 高温環境下での使用に適しており、特に直射日光が当たり続ける屋根や壁面で効果を発揮。
- 大型工場や倉庫などの広い屋根面積を持つ建物で使用することで、建物全体の温度上昇を抑制。
- 屋外環境が厳しい場所に最適で、太陽光による熱の吸収を大幅に低減し、エネルギーコスト削減にも寄与。
- 住宅用としても適用可能で、夏場の冷房負荷を軽減し、居住空間の快適性を向上させる。
3. アクアシステム:断熱くん
画像引用:YAHOO!ショッピング
- 組成・材質:水系塗料
- 熱反射率:92%
- 熱伝導率:0.015W/m・K
- 耐候性:JIS A 6909 100時間試験で異常なし
- 設計単価:5,000~6,000円/㎡
- 耐用年数:15年
- 適用シチュエーション:
- 住宅の屋根や壁面の遮熱対策として効果的で、エネルギー消費を削減し、光熱費を節約可能。
- 遮熱と断熱の両方の効果を求める場合に適しており、冬場の断熱性向上にも貢献。
- 高い耐候性を備えているため、メンテナンスの手間を減らし、長期間安定した性能を維持。
- 学校や病院などの公共施設でも使用でき、快適な室内環境を提供。
4. オバナヤ・セメンテックス:OSクール工法

- 組成・材質:弱溶剤系塗料
- 熱反射率:日射吸収率0.23%
- 耐候性:JIS A 6909 1000時間試験光沢保持率76%
- 設計単価:3,800~4,000円/㎡
- 耐用年数:15年
- 適用シチュエーション:
- 屋根や外壁の塗り替えに適しており、特にスレート屋根や鋼板屋根に最適。
- 高温環境下での使用に耐えられるため、工場や倉庫の屋根に塗布することで、内部の温度上昇を大幅に抑える。
- 高耐候性を備えており、メンテナンスの手間が少なく、長期間効果を維持。
- 大規模な商業施設や公共施設にも適しており、環境負荷低減とエネルギーコスト削減に貢献。
5. アトミクス:アトム遮熱バリアルーフ

画像引用:楽天市場
- 組成・材質:弱溶剤系塗料
- 熱反射率:92.36%
- 耐候性:JIS A 6909 300時間試験光沢保持率98%
- 設計単価:2,600~3,500円/㎡
- 耐用年数:7年
- 適用シチュエーション:
- コストパフォーマンスを重視する場合に適する。特に金属屋根や波形スレート屋根に最適。
- 施工が容易なため、DIYでの塗装を考えている方にも選ばれやすい。
- 住宅の屋根にも適しており、遮熱効果による冷房費の削減が期待できる。
- 飲食店や工場の屋根に塗布することで、室内の温度上昇を防ぎ、作業環境を改善。
6. スズカファイン:レベクールコート+クールトップSiスーパー

画像引用:楽天市場
- 組成・材質:水系塗料
- 熱反射率:日射反射率60.7%(全波長) 82.3%(近赤外)
- 耐候性:JIS A 6909 1000時間試験光沢保持率80%
- 設計単価:2,800~3,500円/㎡
- 耐用年数:10年以上
- 適用シチュエーション:
- 住宅やオフィスビル向け。特に外壁の遮熱効果を求める場合に有効。
- 遮熱性能だけでなく、防水効果も兼ね備えているため、長期間安定した保護効果を発揮。
- 学校や病院などの公共施設に適用することで、快適な室内環境を維持。
- エネルギー削減を目指す企業や施設に導入することで、ランニングコストを抑えることが可能。

まとめ
各社の遮熱塗料には、それぞれ異なる特性とメリットがあります。どの塗料を選ぶかによって、建物の快適性やエネルギーコスト削減効果に大きな違いが生じます。高反射率を持つ製品は直射日光を強く反射し、室内の温度上昇を防ぐ効果が高い一方、耐候性が高い製品は長期間にわたり安定した性能を維持することができます。環境負荷を考慮した製品は、持続可能な社会を実現するための一歩となり、ヒートアイランド現象の抑制やCO2削減にも貢献します。
さらに、遮熱塗料を選ぶ際には、用途に応じた最適な製品を選ぶことが重要です。工場や倉庫などの大規模施設では、高反射率と耐久性を兼ね備えた塗料が最適でしょう。住宅や小規模な商業施設では、施工のしやすさやコストパフォーマンスを重視した製品が選ばれることが多く、エネルギーコスト削減効果とともに、快適な室内環境を維持することが期待できます。
また、選択肢の中には遮熱効果だけでなく、断熱性能を備えた製品もあり、冬場の寒さ対策にも効果を発揮するものがあります。年間を通じて快適な温度を維持するためには、遮熱と断熱の両方を考慮することが求められます。さらに、適切なメンテナンスや定期的な再塗装を行うことで、遮熱効果を最大限に活かし、建物の寿命を延ばすことができます。
- 環境負荷を考慮するなら:「アドクールAqua」はヒートアイランド現象の抑制や省エネルギー対策に貢献します。
- 高反射率を求めるなら:「セラミック・カバーCC100」や「アトム遮熱バリアルーフ」など、日射反射率の高い製品が適しています。
- 耐候性を重視するなら:「OSクール工法」や「レベクールコート+クールトップSiスーパー」が最適で、長期間にわたり安定した性能を発揮します。
遮熱塗料の選択は、建物の立地条件や使用目的に応じて慎重に行う必要があります。特に、日射の影響が強い地域や、高温環境下での作業が求められる施設では、最適な塗料を選定することで冷房コストを大幅に削減できます。また、長期間にわたりメンテナンスコストを抑えるためにも、耐候性の高い製品を選ぶことが推奨されます。
適切な塗料を選択し、計画的な施工を行うことで、快適な環境を維持しながら、ランニングコストを抑えることが可能になります。各製品の特性を理解し、自分のニーズに最適な遮熱塗料を選びましょう。